平成30年11月11日~17日にかけて大阪府地域福祉推進財団主催「エイジレス海外研修」にハートケアグループ職員、高田、鈴木、亀澤、宮良の4名が参加しました。

海外研修行程

11月12日・13日はスウェーデン、11月14日・15日はフィンランド の高齢者福祉施設を視察しました。

11月12日、テラス・フリーティーズセンター(スウェーデン・ストックホルム)へ
市からの委託を受けて2名の経営者と他数名で運営されている、日本でいうと地域包括センターや社協に近い施設です。ホールでは無料のプログラムが組まれていて1日360名くらいの方が参加されています。映画、ヨガなどのプログラムは人気で、季節毎の外出イベントも豊富でした。キノコ狩りやカーリングが人気とのことです。

棒体操のプログラムは、93歳の先生がユーモラスに30分近く行なっているのが圧巻でした。参加者も「ケアしてれば90歳を超えても元気でいられる!」とモチベーションになるようです。

施設の2階は民間の特養となっていて、ケアスタッフなどは施設にはおらず、送迎や同行は、それぞれ自己負担で行われていました。(年金はなんらかの形で少しの贅沢と生活が出来るくらいは出ているので、6万円残る位までは自分たちで払って参加するスタンスとのことでした)

この日の来訪者は、併設のカフェやレストラン、市立図書館の分所(高齢者しか利用できないのでじっくり選べる)や手芸教室(参加されてる方々が写真を逆に撮り返してくる一幕)に参加されていました。運営は、1970年代から、市の委託として行なわれ、隣接のカフェレストランや貸しスペース等が主な収入とのことでした。

11月13日、スウェーデンのシルビア王妃の提唱により運営している高齢者福祉施設『シルビア・ヘメット』へ。

高齢者のためのデイセンターと認知症の人のための施設で、2000年5月には天皇・皇后両陛下も訪問された施設です。
ご利用者8名~10名に対し4名の『シルビアシスター』が対応されています。シルビアシスターは認知症認定看護師のようなニュアンスです。(シルビア財団の認知症ケア知識を共有している職員、シルビアドクター、シルビアPT(理学療法士)・OT(作業療法士)もいて、多職種で構成されています。)
スウェーデンの認知症は「治らないもの」と捉える所からケアの視点が始まっています。個人の歴史背景を踏まえた上で受け入れること(パーソンセンタードケア)や、症状が出にくいように周りが対応としてコントロールすること(症状緩和)、例えばご利用者の何か問題行動が起こりそうな場面で、こちらが先回りして自然に防ぐようなケアが行われていました。また、軽介助の際は、家族も積極的に手伝うお国柄なので家族へのケア(主に精神面におけるケア)も大切にされていました。また、施設内の設備の工夫として、衝動的な気持ちを抑える抱かれるようなソファ、揺れが気持ちいいベッド(なんとメイドインジャパン)、トイレなどを原色にして分かりやすくしたり、トイレの鏡で覗かれてるとご利用者が勘違いしないためのカーテンなど、調度品や住環境にも工夫が施されていました。

11月14日・15日、フィンランド、ヘルシンキ市とエスポー市の施設を視察
 フィンランドでは公的な医療機関とプライベート医療機関があり、公的な医療機関では待ち時間が長く、プライベート医療機関では待ち時間はないが診察にかかる医師の時給を支払う(風邪でも数万円の支払いとなる)形があります。

施設に関しては健康な状態でも入れる私立の介護施設(自費)と医師の指示による介護レベルで決まる公的施設に分かれ、公的な施設は収入に応じた支払い形態ですが、払い切れない分は市が補助する形になっています。

エスポー市 『ヴィラアンダンテ』へ
 高級有料老人ホームという立ち位置の介護福祉施設。平屋の建物で中庭もあり、各棟にコックがおります。(ヘルパーサービスなども込みの値段で、月額5000€(現在約64万円)と高額です。

認知症者への対応の工夫としてフロアごとの色分けや顔写真で部屋を認識してもらうなどの工夫が見られました。夏期は中庭で森林浴をされることも多く、一年を通して音楽演奏が開催されています。食事は同じ食事でも必要に応じて牛乳で薄める、ムースにするなどの工夫をされていました。医療サービスとしては理学療法士が施設に訪問して個別訓練を行ったり、歯科衛生士が年に一回検査のために訪問します。車椅子でのベルト装着は医師の許可があれば可能であるとのことでした。海外研5

エスポー市2つ目の視察、『LEPPAVVARA LIFE AND LIVING CENTRE』へ。
こちらはデイケアセンターと入居施設が併設する、市運営の24時間ケア付き高齢者施設。入居者以外の高齢者にも開放されており、会合などに使われたり、レストランでも食事を摂ることもできます。
ここでは、お昼ご飯をご利用者と一緒に食べさせてもらいました。こちらにはST(言語聴覚士)が定期的に巡回し、嚥下評価をメインに常食からペースト食までは施設対応されています。理学療法士も医療保険として訪問サービスがあるとのことでした。 一階のデイサービスは、基本無料で、一日の流れは、各自タクシーで訪問→ジム系のプログラム→昼食→文化的プログラム→3時にタクシーで帰宅というもの。多目的ホールではライブ配信の独立記念日イベントをスクリーンで見たり、ジムプログラムを個別にカード管理し、管理者がメッセージを加えて次のプログラムや負荷量も設定できるとの事でした。部屋の中は床にセンサーがあり、離床や転倒などはすべて床センサーからスタッフのスマートフォンにデータとして送られるとのことでした。
また移民難民の受け入れも行なっており、施設スタッフの国籍は17カ国とのことでした。その中には介護職になる為ではなく語学学習として一年施設に来ている方もおられるそうです。フィンランドにおいて、公的施設入所の期間は平均2年から3年でターミナルケアに近い立ち位置のようでした。財政面の問題もあるとのことでしたが最後の家だからこそ高級有料老人ホームに負けないほどの環境でもありました。因みに食事は1日4食とティータイムで5回食堂に集まるとのことでした。こちらでも各部屋に外気浴テラスがありました。~観光、国としての特徴などの感想~

視察の合間に幾つかの観光名所にも足を運ぶ機会を頂きました。ストックホルムではノーベル賞の受賞式が行われている総合庁舎や旧市街、王宮に足を運びました。生憎の天気(この時期は殆どが曇りかにわか雨の様)ですが、バルト海、メラレン湖を見渡しながら島々を繋いで形成されるストックホルムの街並みや、王政ならではの伝統的な街並みは印象に残りました。また視察の合間にストックホルム市街の福祉用具店にも行く事が出来ました。「北欧といえば雑貨」ですが、出来るだけ在宅で自己決定の元過ごす、という理念からもカスタマイズの可能なバラエティに富んだ福祉用具や普段の業務に活かせそうな洗練されたデザインの道具が沢山ありました。日本からでもインターネットで購入可能な用具もあるようでした。ストックホルムからヘルシンキへは豪華客船シリアラインでの移動となり、12階建ての客船での移動は良い思い出となりました。またフィンランドではシベリウス公園やマリメッコ本社、ヘルシンキ市街と限られた時間ではありましたが、満足のいくお土産の購入も出来ました。~全体を通して~

医療福祉の模範となるイメージの強かった二か国の視察でしたが、その国々の事情、文化から難しい部分もあり、全てが日本で反映出来る、という訳でもないと感じましたが、自立した生活を続ける工夫・障害者への関わり・環境作り・移民政策・IoT関連の充実と今後の日本が進むであろう形の一部をイメージし易くなったのは収穫でした。今後の自身の業務に活かしていければと思います。

参加者4人で共に体験できたこと、意見交換出来たことも掛け替えのない財産となりました。海外研11