平成28年11月14日(月)から平成28年11月19日(土)の6日間、大阪府地域福祉推進財団の主催のロサンゼルスへの「海外福祉事情調査研修」に、ハートケアグループ職員井口・奥村が参加しました。
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視察した施設は”終末期ケア用介護ホーム””総合シニアコミュニティー””認知症専門介護施設””ホスピス専門施設”の4か所です。アメリカには介護保険制度が無いためなかなか聞き慣れない名称ですが、まずは大まかに視察先をご紹介させて頂きます。
(1)Caring house(ケアリングハウス):終末期ケア用介護ホーム
ベット数6床で閑静な住宅街にある施設。外部のホスピスサービス事業と提携し、余命6カ月を宣告されている方のターミナルケアを行っている。創業者がNYで自身の家族のケアをしてもらった経験から12年間寄付金を集め続け、開設に至る。
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(2)Atherton homes(アサートンホームズ):総合シニアコミュニティー
1914年に牧師などの協会関連者を対象として開設。現在は非営利団体として運営し、入居者は約350名。自立の方からターミナルケアまで段階別に行っている大型施設。
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(3)Silverado senior living (シルバラードシニアリビング):認知症専門介護施設
認知症の診断がある方のみ入居でき、現在入居者は87名で満床。ペットの受入や外部との交流など施設であることを認識させないよう様々なアクティビティを提供している。
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(4)Citrus valley hospice(シトラスバレーホスピス):ホスピス専門施設
ベット数10床で、医師からホスピスケア指示のある患者が対象。担当医、看護師、介護士、SWなど各専門職がチームとなりターミナルケアを提供する施設。
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アメリカは介護機器が発展しているのではないかと勝手に想像を膨らませていましたが、意外と最新の福祉用具や介護ロボの導入は見られず、4か所の施設共通して言えるのがメンタルケアを最重視しているところでした。
また日本では課題である”虐待”ということに関してはあまり課題ではない様子で、虐待を発見した場合は警察に報告する義務があり、それは企業の責任ではなく個人の責任とされることが多く解雇処分も比較的簡単にできるとおっしゃっていました。また利用者に対して職員の数が多く、人員不足によって起こりうるストレス環境は少ないとのことです。
さらにボランティアの文化があり、食事・洗濯・買い物・掃除のボランティア以外にも財務管理や寄付金を集める方、書類整理、チャプランと呼ばれる宗教的なメンタルケア専門のボランティアも活動されており、施設によっては30名程ボランティアの方がこられている所もあります。ボランティアといえどルーティンワーク化されており面接や研修もあるそうで、直接ボランティア活動されている方にお話しを伺ったところ、活動が自身の生活の一部になっているとおっしゃられていました。もちろん完全無償で慈愛の精神での活動ではありますが、一方では大学入試の内申点や卒業単位にボランティア活動が含まれていたり、活動を義務付けられているような印象も見受けられました。
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しかしアメリカには医療保険対象の施設(ホスピス施設やナーシングホームと呼ばれる看護が必要な方対象の施設)でなければ公的扶助がなく、介護施設は自己負担となり高額です。あくまでも個人的な感想ではありますが”高齢者介護”という分野では日本の方が格差なく保障され、ある程度一律のサービスを受けれるような印象でした。
もちろん制度や文化の違いがあるため比較することは出来ませんが、共通した課題は介護職の離職と育成です。管理者の方も”ご利用者の管理より職員の管理の方が難しく、多国籍の職員が勤務しているため職員間のもめごとは日常茶飯事だ”とおっしゃっていました。異文化の職員を統括するのは本当に大変なことだと思います。ただガイドさんからは”日本のように本音と建前という文化がないから逆に分かりやすいかも…?”というような意見もあり、なるほど...と納得してしまいました(笑)
長いようで短い研修でしたが、観光する時間もありとっても有意義な研修で楽しく過ごすことが出来ました。
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