リハビリプラザ藤井寺の営業所長阪上から、「脳出血で高次脳機能障害になったがリハビリを続け就労目標を達成できた方」がいらっしゃると聞き、インタビューに行ってきました。ご本人と営業所長の阪上からお話を伺ってきましたので紹介します。
その方はM様(62歳)で、明るくまじめで人を気づかうことができる人。人との関わりが好きで、おしゃべりしていると人が集まってくる人気者だそうです。私がリハビリプラザ藤井寺を訪問した時も楽しそうに友達とお話をされていました。とても明るく若くてお元気そうで、障害をお持ちの要介護者には全く見えませんでした。
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M様は、昨年1月職場で脳出血によって倒れ救急搬送され、数日間意識不明だったそうです。そして高次脳機能障害と診断されました。倒れた時の記憶はなく、病院で意識を取り戻した時、「ここはどこ?どうしたの?」と状況が理解できなかったそうです。質問内容が理解できず、返答もできず、会話ができない状態でした。搬送された病院を退院した後リハビリテーション病院で半年間入院されました。記憶を呼び戻すこと、頭で考えて文章を書くこと、物を隠してもらってどこに何を隠してあるかを聞き、しばらくしてから探しに行くなどのリハビリを繰り返し繰り返しされたそうです。そして、昨年7月のリハビリテーション病院退院後からリハビリプラザ藤井寺を週3回、他のデイケア(悠々亭通所リハビリテーション)を週2回利用されています。
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さて、高次脳機能障害とはどのような障害でしょうか? M様の場合、マヒなど身体的運動機能に障害はありませんが、「記憶障害(スケジュールがわからない)」「注意障害(二つ以上のことを同時にできない、他のことに関心を転換できない)」「遂行機能障害(見通しの欠如、計画性・効率性の欠如)」があります。
「記憶障害」とは、例えば、リハビリプラザ藤井寺での今日一日の自分のメニュー(する事や順番)が覚えられないのだそうです。しかし、メモに書くことでできるようになります。家でも日記のように一日にあったことを書き留め記憶を呼び戻すリハビリを続けているそうです。
「注意障害」とは、例えば、何かをやっていて中断するとさっきまでやっていたことを忘れてしまうのだそうです。しかし、「さっき〇〇してたよなぁーその続きやってくれる?」と声かけすると、思い出してまた続きができるそうです。声かけをしてもらうことで戻って確認し補えるのです。
「遂行機能障害」とは、料理で例えると、メニューは頭の中だけでは決められませんが、料理の本を見ると決めることができます。メニューだけでは必要な材料がわからず買い物はできませんが、買い物リストを持って行くと必要な買い物はできます。メニューだけでは手順がわからず調理はできませんが、レシピを見るとできます。ひと手間かけることでできるようになるのです。M様は、「以前は感覚で調味料を適量入れて煮物をうまく味付けできたのに、今はそれができないんです」ともおしゃっていました。
営業所長の阪上は言います。「Mさんはできないことでもひと手間入れるとできる。自分はできないことがあることをわかっていて、それは補ったらできることもわかっている。これはすごいことです。メモをとること、繰り返すこと、確認すること、手順書をみること、工夫をすること、などひと手間かけることでクリアにしていける。そうして、今リハビリプラザ藤井寺の食事の準備を全部やってくれてるんですよ」と。
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そして、M様はリハビリプラザ藤井寺以外にもう一か所通われているデイケア(悠々亭通所リハビリテーション)に、実は4月中旬から週1回ボランティアで働きに行かれています。M様は、来られた方に飲み物を入れたり、お味噌汁をよそって食事の配膳のお手伝いをしています。「今日はどっち?(利用者かボランティアか)」と言われるとおっしゃっていました。というのは、週1回は利用者として、あとの1回はボランティアとして行かれているからです(笑)。7月からの正式入職に向け、まずはボランティアからスタートしました。就労への一歩ですね!
就労に向けての準備として、リハビリプラザ藤井寺では療法士と一緒に、周りに注意して自転車に乗ること、バスに乗って目的地に行くことなども練習されたそうです。駅まで自転車で行かれるので、スタッフみんなからは合羽をプレゼントしたそうです。目標であった就労についてM様は、「私は別に働きたくないんですよー。娘が働け働け!銭稼いで来ーい!と言うんです」とユーモアたっぷりにお話をしてくださいました。「リハビリプラザ藤井寺では、体力づくりや社会交流(おしゃべり)をしてます。これが楽しくて楽しくて!元気になってもここを卒業はしたくなーい!」とおっしゃっていました。
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このように就労目標を達成できたのは、もちろんM様が頑張ったからですが、M様の持ち前の明るい前向きな性格、M様に関わるケアマネジャー(介護サービスセンターゆうゆう亭)・就労先のデイケア(悠々亭通所リハビリテーション)・リハビリプラザ藤井寺・ご家族の連携やチームワークがよかったこともあったようです。ご利用者お一人おひとりの想いを尊重してみんなが連携して支援する素晴らしさにも心打たれました。

なお、M様のインタビュー内容は、ハートケア通信2015年6月号にも掲載予定です。

インタビュアー 上田美津子