~高齢者がしっかり食べられる食事の取り組み⑤~

 

今回は誤嚥(ごえん)・脱水防止委員会で活動している言語聴覚士の西村さんのインタビュー後編です。

 

*前回の記事はこちらから!
美味しく食事を食べるお手伝い~高齢者がしっかり食べられる食事の取り組み④~

 

『言語聴覚士の視点』~食事量・時間について~

 

ハ:「前回はありがとうございました! 次は前回の続きで、誤嚥・脱水防止委員会でご入居者の食事の動画を見ているときに、言語聴覚士として注目するポイントの最後の一つを教えてください!」

 

西:「最後のポイントは、ご利用者の食事量その量を食べるのにかかる時間です。

食事は楽しく美味しいものですが、美味しくても食べにくい、飲み込みに時間がかかりすぎてしまうと食事をすること自体に疲れてしまったり、また、食事時間はかかっていなくても、量が少なければ栄養不足になってしまいます。

そこで私が基本的な目安にしているのが、『30分で食事の7割を食べられているか』です。この目安を元に、ポイント1の「食事時の喉の動きや呼吸音などの様子」、ポイント2の「食事形態」も合わせて複合的に判断します。

 

 

もし、ご入居者が『刻み食』からステップアップを希望されていたなら、この目安を一定期間続けられているかや、持病からくる症状など様々なことを考慮して、可能かどうか、また希望に添えるようにするにはどうしたらよいか助言をすることもあります。

 

他にも例えば、

刻み食にした方の場合…

刻んであるのに飲み込んだり、口に入れるまでに少し時間がかかっているなら、逆に刻むことで食材がばらけて食べにくい可能性が考えられます。そういうときは、マヨネーズで和えたり、どんぶりにしてまとめて食べやすいようにします。

 

呑み込みのタイミングが合いにくい、むせてしまう方の場合…

実は、高齢者にとって固形物よりもサラサラの水分の方が喉を通る速度が速いのでむせやすいです。そんな時はとろみをつけますが、食事シーンを見てその方にあったとろみ具合を提案しています。

また、とろみがついてもおいしく食べられるように飲み物は冷やすなど、よりおいしくなるような工夫を提案しています。

 

 

西:「『30分で食事の7割を食べられているか』という指標を作ったのは、ご利用者の食事評価をする以外にももう一つ目的があります。

ゆくゆくはこの指標を介護職、看護師など他の職員でも使うようになり、いち早いご入居者の食事改善に繋げていきたいということです。

私たち言語聴覚士は専門的な知識を使ってご入居者のサポートをしていますが、委員会は他にも多職種の専門家の意見を交換できる場です。
委員会では様々な職種の職員が集まり、様々な視点から食事について検討できることがご入居者にとって良いことであると同時に、参加している職員にも良いことだと思っていて、上記の指標のような言語聴覚士の持つ専門性をある程度、他の職種の職員にも共有し、逆に他の職種の知識も共有できればお互いを高め合えますし、ご入居者の食事もより良いものになるでしょう。

 

ハ:「委員会は、意見交換しあう職員にとって、様々な視点からご入居者の食事について考えられる場になっているのですね、勉強になりそうです」

 

 

 

ハ:「ご飯を食べることって普段の何気ない生活の一部ですが、環境、口腔、食事形態、ご入居者の状態など本当に様々なことが関わり合っていて意外と複雑で難しい…」

 

西「様々な視点から食事について考えていますが、食べやすさやどのように食べたいかは人それぞれ。その人に合った食事を考えるのは確かにちょっと難しいところもあります。

ですが、どの視点でも変わらずに大切にしていることは『食事は生きる楽しみ』、つまり、口から食べて味わうことです。

「口から食事をする」ことは、栄養を取るだけでなく、食材や料理を見て「美味しそうだなぁ」と楽しみに思うこと、家族や親しい人と一緒に楽しく食事をとること、口から食べることで消化器官が働く、食器を使うことで手や指の運動になるなど、楽しみや健康にも良いことです。

また、構音障害や嚥下の訓練をされている方にとっては、食事が喉やあごを動かすことにもなり、発声の助けになります。このように、食事を改善することは、ただ体の維持が目的ではなく、その方の生活全般の質を上げることにも繋がると考えています。

食事改善を通して、食べやすくなったことで自分から「食べよう!」と前向きな気持ちになり、表情や気持ちが変化し、趣味活動、リハビリ、家族や親しい人との交流など食事以外の部分でも、日々を明るい気持ちで楽しく過ごせるようになっていただければいいなと思います」

 

ハ:「西村さん、今日はインタビューに答えてくださってありがとうございました」

 

西:「このインタビューで言語聴覚士の役割や誤嚥・脱水防止委員会の取り組みを少しでも伝えられていると嬉しいです。こちらこそありがとうございました」

 

全5回に渡って誤嚥・脱水防止委員会の取り組みを紹介してきましたが、いかがだったでしょうか?

ハートケアグループでは、食事以外にもクラブ活動や趣味活動など、ご入居者が日々を楽しく過ごせるように様々な取り組みを行っています。

またブログ記事で紹介していきたいと思いますので、次回もぜひご覧ください!

 

ハートケアグループ

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